フレームワークを持っていることの価値を改めて考えてみたのです

当社で標準的に利用しているフレームワークは、現在、3代目です。

1代目(GSSと呼んでました)は、かなりオリジナルな要素が多かったですが、2代目(「Jairo」と名付けました)から大幅に世の中の流れを取り込みつつ、3代目(Jairo2)になるにあたっては、当社なりの経験(体験)から、当社のターゲットとしているBtoC分野でのWebアプリケーション開発にとってメリットのある要素をフレームワークとして積極的に盛り込ませたものになっています。

フレームワークの有用性についての議論というのは、いろいろあると思いますが、実際に開発に取り組む開発者の視点と、それ以外の職域の方々の視点で、非常に重要度の認識に差が出るものでもあり、なかなかそのギャップを埋めるには努力を要するものであるように思います。

今回は、そのギャップを少しでも埋められる話にできたらと思って、私なりの解釈でフレームワークの有用性(大事にすることの価値)についてまとめたいと思います。

観点は、どちらかというと開発現場のお話ではなく、組織運営的な観点からのお話になっています。


まず、結論からですが、フレームワークというものの有用性を理解し、重要視できている会社と、そうしたものに対する意識があまりなく、都度都度の対応で開発をこなす会社では、一言で言うと「アウトプットに大きな差がでてくる」と思っています。


どの開発会社でも、アプリケーション開発の現場では、おそらくフレームワークについての有用性の認識があるのが普通のことだと思いますが、経営陣や営業部門はもちろん、バックオフィスに至るまでが、フレームワークの有用性をしっかりと捉えて、それを会社として保有し、育て、活用し、強みにできていると認識できているところは、全体から見たら少ないのかもしれない、と感じています。

パッケージソフトやソリューションを「商品」として掲げる会社は、その「商品」の開発現場が「商品」を作るためにフレームワークを活用していることが多いでしょう。しかし、その現場で何を利用していようとも、会社全体でそれを認識している必要はあまり無いことと思います。開発部門以外の部門は、自社で取り扱かっている「商品」このことをまずはしっかり意識(理解)していることに高い優先順位があると思うからです。

ですが、当社を含めた受託開発を基本とした会社では、フレームワークが会社の中にあって、それを意識して組織が運営されているのと、そうでは無いのとでは、大きな差があるように思うのです。


それは、会社が様々な仕事を通じ、時の経過と共に獲得していく「経験や知識」を未来に継承していくことができる具体的な対象があるか無いかの差になってくるのではないかと思うのです。


「学習する組織」という言葉がありますが、自社に標準とするフレームワークを保有し、それを自分たちで育て、活用し、強みにできている(あるいは強みにしようとしている)開発会社は、まさに「学習する組織」に既になっている(無意識のうちにそこに向かっている)ように思うのです。


「学習する組織」の対極にあるのが「管理する組織」ですが、品質や納期をルールを作って管理する努力をいくら優先しても、本質的に組織が経験から学習し、新しい仕事にそれを自発的に活用するフィードバックの仕組み(対象)がなければ、結果として、プロジェクト毎の品質にばらつきが出たり、同じ過ちを何度も繰り返したり、構成メンバーの入れ替わりによって極端にパフォーマンスが落ちたりということを避けきれないように思うのです。

また、組織的な対応力を発揮してトラブルに対処する力が発揮できるのも、標準的に用いるフレームワークが定められている強みになるのではないかと思うのです。現場の中でやりとりされる共通言語があり、状況の共有がスムーズにできることが、トラブルシューティングをする上では非常に重要だと思うからです。


開発を委託する場合の委託先選定プロセスの中に、こうした差を評価して頂ける項目があることが望ましいところではありますが、必ずしも、この差を見極めた上でのパートナー選びが十分にできうるかというと、そうでも無いのが実情かもしれません。見積もり価格が安いことを第一に考えた場合には、こうした観点の価値の比較が抜け落ちる可能性があるように思います。

私たちは、技術的な話を噛み砕いて、エンドユーザ企業様にこうした価値の比較検討が十分にできるよう、分かりやすい説明をしなければならないと思っています。

そして、それをすることが、インターネット産業を産業として成熟したものにするために必要なことで、私たちのミッションの1つなのかもしれないと思っています。


当社にはもう3代目になる、大切に育ててきたフレームワークがあり、それを中心に、組織的に、個々のプロジェクトで個々に得た「経験や知識」を組織全体で共有できるような土台が存在しています。こうした土台のおかげでトラブルシューティングにしても幸いにして組織的なアクションが取れるようになっていると思います。

まだまだその取り組みについては、道半ばですが、こうした土台を利用して価値を組織内に溜め込んでいくことは、当社を選んで頂いたお客様にとって、必ずやベネフィットをもたらすものと信じています。

フレームワークを持っていることの価値を改めて考えてみると、こういうことなんじゃないかなぁと、改めて思いました。




・・・夏が戻ってきた感じですね。週末のBBQが楽しみです。

コンテンツを販売する際のプラットフォームの選び方

 先々週、ついったーでつぶやいたのですが、「はてなポイント3万を使い切るまで死なない日記」の
コンテンツプラットフォームの未来
http://d.hatena.ne.jp/kawango/20090717/1247788288

というエントリーを読んで、なんだか自分の頭で考えていることをアウトプットする欲求に駆られまして・・・・。^^; 

で、お題は、「インターネットでコンテンツを販売する際のプラットフォームの選び方」という内容になりました。

以下にて、全文ご披露致します ^^;

<インターネットでコンテンツを販売する際のプラットフォームの選び方>

インターネットでコンテンツを販売しようと考えたら、まず第一にコンテンツのフォーマットがどういったものになるのか、その観点での吟味が必要になります。

音声データなのか、動画データなのか、画像なのか、PDFなのか、はたまた、ゲームなどのソフトウェアなのか。

もともとインターネット上にデジタルデータ(ファイル)として流通可能なフォーマットになっていないもの(たとえばDVDとかCDといったパッケージに収まったフォーマット)の場合には、最も手間無く変換可能なフォーマットは何になるのかを見極める必要があります。


次にターゲット(売り先)の見極めが必要です。

パソコンユーザを対象にするのか、ケータイユーザを対象にするのか。

パソコンにしても、国内では90%以上のシェアをもつWindowsマシンを対象にすればよいのか、比較的少数派にはなるものの存在感のあるMacをターゲットにすべきか。

こうした観点から、流通させたいコンテンツとその対象を決めると、選択可能なプラットフォームがおおよそ見えてくると思います。

市場の広さ(=単純にユーザーの多さ)を考えれば、ケータイ利用者を売り先として視野に入れることはアリな考え方です。ですが、ケータイでスムーズに取り扱えるフォーマットにコンテンツを変換しうるのか?という観点でも検討が必要になります。ケータイも高機能化され、いろいろなフォーマットでコンテンツ配信ができるようにはなってきていますが、制限がまだまだいろいろあります。ケータイコミックなどは標準的なフォーマットか既に確立されている代表的な例ですが、販売したいコンテンツがそうしたフォーマットへの対応を簡単に行えるかどうかを見極めなければなりません。


コンテンツの出し先とフォーマットがおおよそ見えてきたら、続いて、数あるコンテンツ販売プラットフォームの中からどれを使うのがよいか、検討する段階に入ります。

もちろん、プラットフォームを自作してしまうという発想がこの時点である場合もあるでしょう。投資はかかりますが、やりたいことを完全に思いのままに実現するためには自作するという発想になっても不思議ではありません。

しかししかし、販売プラットフォームを自作し、そのプラットフォームを利用してコンテンツ販売を試みた例で、最終的に初期投資を回収しきれず、力尽きてしまった例は無数にあるように思います。自作することで自由に要件を定義できるだけに、なんでも盛り込む傾向となり、結果的にオーバースペックなプラットフォームをこしらえてしまい、その後の回収に苦戦するといった例です。

こうした過去の失敗事例から学べば、自作という選択肢はよほどのことが無い限りコンテンツホルダーにとって選択しえないのではないかと思います。

そうなると、コンテンツホルダーは、プラットフォームを保有してコンテンツ販売サイトを運営している販売事業者にコンテンツの販売を委託するか、コンテンツプラットフォームを機能として貸し出してくれる事業者から販売の仕組みを借り受けて、あたかも自前の販売サイトのように運営するかのどちらかの選択肢を求めることになるかと思います。


前者は商品を販売店に卸す形に近い話です。販売に関する一切をお任せできるのでコンテンツホルダーにとっては楽な選択ではありますが、一方で、販売価格の決定権は持てないし、実際に購入したエンドユーザーの情報も握れない。その上で、それなりの%での販売手数料を通常は求められたりもします。

販売を委託した場合、本屋さんに本が並ぶような形になりますが、意図しないジャンルのコンテンツと同列で陳列をされてしまう可能性などもあり、ブランディングを大切にしたい場合には不向きなこともあるかと思います。

商品としてのコンテンツの供給に徹して、消費者に対する小売を流通に任せるという構造は、非常に分かりやすい話ではあるのですが、あまりインターネットっぽくは無い感じもしますね。


インターネットの良いところは、情報の生産者と消費者がダイレクトにつながれる点にあり、その効率のよさをビジネス上のメリットに変えられれば、インターネットの価値を享受して、リアルな世界では決して実現できないような効率のよい結果を得られる可能性があるというところです。


そこで後者の選択、つまり、販売の仕組みのみを借りて、直接消費者にアプローチし、獲得したファンとの関係を自らで大切に育んでいくことで大きな価値を醸成していくという手段を選ぶことも選択肢になってきます。

実際にこの選択をとってダイレクトにコンテンツ販売を行っているのが勝間和代さんです。


デジタルコンテンツを販売するためのプラットフォームの中からASPとして利用可能なものを選択し、自らのサイトで、自らのブランディングとマーケティングによって顧客を獲得して、ビジネスを展開していらっしゃいます。

もちろん、コンテンツを流通させる上でのフォーマットとプラットフォームの組み合わせに関しては、より多くの方に届けられるようにするためにさまざまな展開を行っていらっしゃっており、ネットの利点を生かした効率のよいビジネスを推進されています。


結論、コンテンツホルダーにとって、インターネットを活用するメリットは大きいはずなのです。

しかし、ITリテラシーを高めて、自らでやれることをどんどんやっていかないと、結局は中間で仕事を代行する様々なプレイヤーにコストを支払ってビジネスを駆動させる(まかせる)構造になってしまい、思ったほど成果が上がらないビジネスになってしまう可能性があるのです。

幸いにして、テクノロジーの進歩によって、必要となるITリテラシーの敷居は下がる傾向にあるといえます。常に研究は必要ですが、いろいろな可能性を試してみて、感覚を掴むことで、やれることはどんどん増えていきます。初期投資を抑えて取り組める手段もいろいろあります。コンテンツホルダーがインターネットの活用に向けてチャレンジできることはかなり増えてきているのではないでしょうか。


インターネットという新規のフィールドでのビジネスを新たに始めるにあたって、「良く分からないことが多いので専門家にすべてお任せしたい」という気持ちになるのは分からなくはない話です。が、すべてを任せてしまっては、インターネットでビジネスをすることで得られるはずの価値を最大限に獲得することは叶わないという一面もあると思います。

今回のエントリーでまとめさせて頂いたように、コンテンツホルダーがインターネットを活用したビジネスから得る価値を最大化させるためには、「誰に向けて」「どういたっフォーマットで」「どのプラットフォームを選択して」コンテンツの販売を行うのかを、十分に検討すること、そして、できるだけ自分たちでやれることは自分たちでやってしまうという考えをもつこと、が重要なように思います。

以上、長々と書いてしまいましたが、これからネットでのコンテンツ販売に取り組もうとされている方の参考になりましたら幸いです。



... もうすぐお盆休みですね。「僕夏」のイメージが頭をめぐります。

NASAのシステム

NASA好きな私が、表紙のスペースシャトルに目が行って思わず手にとり、
即買いしてしまいました。


トーマス・メイラン,テリー・ティーズ
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科学的な印象のNASAですが、「運を最大限に生かすために組織はどうあるべきか」というNASAっぽい科学的なお話とは違う切り口の「組織マネジメント」に関する本です。

過去のエントリーで紹介した、ビジョナリーカンパニーに書かれていたことに共通する視点が多数ありました。

NASAは、運を最大限に生かすシステムを備えた「強い組織」。
難局に対する耐性のある組織がビジョナリーカンパニーなんだなぁとも思いました。


....外、雪、降ってきましたね。